米国特許の早期権利化のための4つのプログラムに関して

米国特許の早期権利化のための4つのプログラムに関して

 日本特許庁は、中小企業や個人の特許出願、実施関連出願、外国関連出願に対して早期審査請求制度があり、運が良ければ出願日から3か月程度で特許権を得ることも可能です。今回は、そのような早期権利化のための優遇制度の米国特許庁における制度に関して説明します。

 端的に言うと、米国庁には、日本の早期審査請求制度に相当するものは有りません。

 また、米国審査は通常、1回目のOffice Actionが来るまで出願日から平均1年6か月かかり、それから拒絶理由の反論などしていくと、権利化までには2~4年かかることも稀ではありません。
 そんな中で、お客様の中にはどうしても早く米国で特許登録を得て、商品に登録番号を付したい(余計な権利侵害を受けることを防止したい)というお客様も多くおられます。そのような状況下で、早期に米国で権利化を図るにはどうしたら良いのか非常に悩ましいところではありますが、手段としては以下の4つがあります。
 (1) Patent Prosecution Highway
 (2) Track One Prioritized Examination
 (3) Accelerated Examination
 (4) First Action Interviewです。

(1) Patent Prosecution Highway
 これは、広く知られていますが、いわゆるPPHと呼ばれているものであります。日本特許庁で登録査定を得た特許は、PPHを用いると、アメリカでも早期に権利化を図ることが可能です。PPHを申請することで、米国特許庁から半年程度で審査結果が届き、上手くゆけば米国での出願日から半年~1年で権利を得ることができます。
 日本特許庁は、実施関連出願、外国関連出願、中小企業、個人、大学、公的研究機関等の出願であれば早期審査を受けておりますので、どうしても米国で早期権利化が必要な場合には、まず最初に日本で早期審査を受けて権利化を図る⇒米国移行時にPPHを請求、というのがベストな手段かと思われます。

(2) Track One Prioritized Examination
(3) Accelerated Examination
 これは、米国庁に多大な費用(申請費用$4,800(小企業$2,400))を支払うことで、1年以内に審査結果を受けられる優先的な制度です。先行技術調査の実施、IDSの提出なども必要となる場合があり、あまり現実的ではないです。
 また、この申請は米国出願と同時に行わなくてはいけませんので、よほどのことがない限り申請されることはないと思います(私もこの経験は有りません)。

(4) First Action Interview
 これは厳密には加速審査ではありませんが、より早期に権利を得られる可能性があるプログラムです。米国庁の審査官が先行技術調査をした段階で、完全な形式のOffice Actionを受ける前に、審査官が出願人とインタビューをしてくれて、その際にお互いが同意に達すれば許可査定をしてもらえるというものです。一方、同意に達しなければ通常のOffice Actionがなされるというものです。
 最初の段階で、審査官と議論ができる、という点が非常に有効であり、その他の点は他の出願の過程とほとんど変わりがありません。
 また、このための米国庁費用は無料というのは魅力的で、申請は、OAが出る前に行う必要があります。但し、この場合に注意が必要なのは米国代理人費用であり、インタビューをするだけで、準備に時間を要する場合には20~30万円の費用を請求されることがあります。

 やはり、現実的な手段としては、(1) Patent Prosecution Highwayが一番有効で、(4) First Action Interviewも試す価値があると思います。
 以上うまく説明できているかは分かりませんが、米国における特許の早期権利化の手段となります。

 弊所は、国際特許、国際商標出願を非常に得意としておりますので、そのようなお客様がおられたら是非遠慮なくお声かけ下さい。相談は無料です。

 蓑和田国際特許事務所 蓑和田 登

2018年05月06日