パリ条約第4条C(1)(2)(4)に関して:実務者向け

パリ条約第4条C(1)(2)(4)に関して:実務者向け

 ご無沙汰しております。
 先日ですが、パリ条約第4条C(1)(2)(4)に関して実務で関連することがありましたので備忘録のために記載させて頂きます。

 パリ条約第4条C(1)(2)(4)は以下のように記載されています。
 (1) A(1)に規定する優先期間は,特許及び実用新案については12箇月,意匠及び商標については6箇月とする。
 (2) 優先期間は,最初の出願の日から開始する。出願の日は,期間に算入しない。
 (4) (2)にいう最初の出願と同一の対象について同一の同盟国においてされた後の出願は,先の出願が,公衆の閲覧に付されないで,かつ,いかなる権利をも存続させないで,後の出願の日までに取り下げられ,放棄され又は拒絶の処分を受けたこと,及びその先の出願がまだ優先権の主張の基礎とされていないことを条件として,最初の出願とみなされ,その出願の日は,優先期間の初日とされる。この場合において,先の出願は,優先権の主張の基礎とすることができない。

 さて実務での場面は、外国のクライアントから連絡があり、端的に申しますと、そのクライアントは欧州商標を8カ月前に出願し、韓国商標を欧州商標を基礎とした優先権主張をして2か月前に出願したと言われました。そして、今度は日本で商標を取得したいが、韓国商標出願に基づいて優先権は主張できればしたい、という話でした。

 ここで解答となるのですが、実務者でもなかなか直ぐには判断は難しいのではないのでしょうか。解答としては、韓国出願に基づいて優先権は主張できないということです。
 それには、パリ条約第4条C(1)(2)が関連する話であり、パリ条約第4条C(1)に記載のように商標の優先期間は6か月です。ですので韓国出願に基づいて優先権主張はできそうですが、パリ条約第4条C(2)の記載より、優先権主張の基礎とすることができるのは、パリ条約の同盟国における最初の出願のみ、すなわち本件では欧州商標のみとなるからです。
 しかしながら、例外規定パリ条約第4条C(4)があって、同一の同盟国に出されたなどの要件を満たせば後の出願を優先権の基礎とすることができますが、ここでの韓国出願はその要件を満たし得ません。

 ですので本件の結論としては、できるだけ早期に優先権主張のない日本商標出願をする、というのがベストな選択肢になろうかと思います。今回は実務者でないと良く分からない内容かと思います。

 弊所は、日本特許・意匠・商標のみではなく、国際特許・意匠・商標出願を非常に得意としておりますので、そのようなお客様がおられたら是非遠慮なくお声かけ下さい。相談は無料です。お待ちしております。

 蓑和田国際特許事務所 蓑和田 登

2020年10月09日