欧州商標出願のまとめ
前回のブログ「米国商標出願のまとめ」が人気があったので、今回は調子に乗って欧州商標出願のまとめも書きます。但し、前回のは米国代理人に色々質問して明確化した点もあるのですが、今回のは書類資料の範囲内で、いわゆる弁理士会の資料のまとめのようなものです。その点、あまり目新しい点はないかもしれませんが、健忘禄のためにも記載しようと思います。
(1)日本とは異なる二重構造
欧州での商標権は、各国商標制度と、欧州連合商標制度の二重構造となっています。
例えば、フランスで商標を欲しい場合には、フランスに直接出願できると共に、欧州連合商標EUTM(European Union Trademark)で取得することもできます。
欧州連合商標EUTMは、当然欧州全域における商標権であり、スペインの欧州連合知的財産庁(EUIPO:European Union Intellectual
Property Office)で審査されます。
(2)審査に関して
欧州連合商標EUTMを選択した場合には、EUIPOの審査官が審査して、①絶対的拒絶理由と言われる基礎的要件のような審査(例えば、商標が公序良俗に違反しないか、識別機能を発揮できるかなど)が行われ、次に②相対的拒絶理由といって、先行商標との同一類似が審査されます。
ここで、日本特許庁と異なり特徴的なのは、たとえ同一類似の先行商標を発見したとしてもそのことを理由として欧州連合商標出願を却下しません(登録はされる)。先行同一類似商標が発見された場合には、出願人と商標権者に通知して、商標権者からEUTMに対して異議申し立てがなされた場合にのみEUIPOが登録した欧州連合商標の維持の可否に関して審査を行うというシステムになっています。
ですので、異議申立てするかしないかは商標権者次第で、日本特許庁のように一から十まで先行商標との確認を行って拒絶するというようなことはないです。
一方、欧州連合商標EUTMではなく各国商標直接出願を選択した場合には、各国での審査制度が適用されます。審査制度といっても、日本特許庁のように、各国庁が先行同一類似商標の調査をして拒絶理由などを通知してくれるのではなく、多くの国(フランス、ドイツ、イギリス、イタリアなど)では審査は基本行いません。
どうゆうシステムかというと、方式審査や基礎的要件という絶対的拒絶理由がない場合には、異議申し立てのために出願商標が公開されます。この出願公告から2か月の間に類似関係にあると考えた“一定の関係を有する者(例えば商標権者)”が異議申し立てを行うことができます。
そして、この異議申し立てがあった場合においては、出願人は答弁書を提出できると共に、各国庁は、異議申立書及び答弁書の内容に基づいて審査を行い、出願商標の登録可否が審査される、という流れです。やはりここら辺は個人主義を重んじるという欧州文化が反映されている気がします。
(3)欧州連合商標EUTMの利点と欠点
よく言われるのは、欧州連合商標EUTMの審査は欧州全域の商標が対象になるために、例えば、ラトビアとか販売市場と全く関連性のない先行商標をもってして異議対象となってしまう点です。
また、上述したように、欧州連合商標EUTMを取得するには、欧州での先行調査が重要になります。EUIPOにおける登録可能性(第三者から異議を受ける虞がないか)、第三者の商標権を侵害することはないか、などを出願前に現地専門家に調査してもらうことが大切ではないでしょか。
当然、特徴的なロゴマークを作成したなど、商標の独自性に自信がある場合には必要ではないかもしれませんが、基本は、現地専門家の先行調査はしてもらった方が良いと思います。
弊所は、国際特許、国際商標出願を非常に得意としておりますので、そのようなお客様がおられたら是非遠慮なくお声かけ下さい。相談は無料です。
蓑和田国際特許事務所 蓑和田 登